株式買取請求権

かぶしきかいとりせいきゅうけん

株式買取請求権とは、一定の場合、株主が自己の有する株式を公正な価格で買い取るよう会社に請求できる権利のことをいう。
株式買取請求には、単元未満株式を発行会社に買取請求する「単元未満株式の買取請求」と、企業再編時などにおける株主総会決議で議案に反対した株主が自己の保有する株式を会社に対して買取請求する「反対株主の株式買取請求」の2種類がある。
後者の「反対株主の買取請求」が認められるのは、譲渡資産額が20%を超える事業譲渡、合併、分割、株式交換、M&A取引など以下の場合に限られる。
・事業の譲渡等をする場合
・合併、会社分割、株式交換、株式移転など、組織再編をする場合
・株式の併合をする場合
・株式に全部取得条項を付す場合
・ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれのある一定の行為を行う場合で、種類株主総会の決議が定款で排除されている場合
例えば、会社が合併など一定の企業再編を行う場合、会社法上、それに反対する株主(反対株主)には、その株主が有する株式を「公正な価格」で買取ることを会社に請求する権利(株式買取請求権)が認められる。
この買取価格について、株主と会社の間で協議が調ったとき、会社は、この再編行為の効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。
組織再編の効力発生日から30日以内にこの買取価格について協議が調わない場合、株主および会社は、一定の期間内に「公正な価格」の決定を求めて裁判所に申立てを行うことができる。
この「公正な価格」は組織再編によりシナジー効果が生じて企業価値が上昇する場合には、そのシナジーを織り込んだ価格、組織再編により企業価値が毀損される場合や企業価値の変動が生じない場合には、組織再編がなかったものと仮定した価格と解されている。
また、市場株価のない非上場会社の「公正な価格」については、DCF(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー)法、配当還元方式、類似会社比準法、純資産価額方式を、個別の会社の事情に応じて複合的に利用する事例が多くあるが、DCF法のみを採用するケースも存在する。
別のケースでは、ベンチャー企業が、VC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家などから投資を受けるとき、「投資契約書」の最後の方に「株式買取条項(株式買取請求権)」について記載されていることがある。
これは、投資家側の請求によって、会社や起業家個人に対して、株式を買い取るよう請求できる、という内容の条項であり、ベンチャー企業ないしその経営者が「投資契約」に違反する行為(表明保証違反など)をした場合に、投資家が投資を回収し、その後の関係を絶つことができるようにするために定めるものである。
また、そのような重大な違反でなくても、投資先企業の事業が計画通り進まず、期間満了までにIPO(株式公開)やM&AなどのEXITが見込めない場合などであっても、ファンドは保有する株式を処分して換金するために株式買取請求権を行使できるような契約とすることもある。
なお、譲渡制限株式を発行する会社において、株主が株式を譲渡しようとする場合、会社法上、株主に譲渡相手の指定、売買価格の決定の申立てなどが認められており、会社が譲渡を認めない一定の場合に、株主は会社に対して株式の買取請求をすることができる。
この買取請求と、前述にある会社法上の株式買取請求権は類似しているが、その趣旨、要件、効果が異なるため、注意が必要である。

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