株式譲渡

かぶしきじょうと

株式譲渡とは、株式会社(対象会社)の発行する株式を譲渡することである。M&Aにおいては、一般的に、経営権も移転させることが前提となる。
株式は、譲渡契約を締結し、株券発行会社の場合は、譲渡人から株券の交付を受けることにより取得することができる。ただし、対象となる株式が譲渡制限株式の場合には、株主総会決議(取締役会設置会社においては取締役会の決議)において譲渡が承認されなければならない。
株式の譲渡制限に関する規定は、登記簿および株券の記載事項とされているので、登記簿または株券(株券発行会社において株券の交付を受けている場合)により、この規定の有無を確認することができる。
株式譲渡(会社譲渡)には数多くのメリットがあり、事業承継の手段としてだけでなく、会社の成長や従業員の雇用継続のためにも有効である。
代表的なものを下記にあげる。
□後継者問題の解決
会社を清算してしまえば、技術・販路・ノウハウは失われ、従業員は路頭に迷い、取引先にも深刻な影響を与える可能性がある。
M&Aによる会社譲渡では、従業員の雇用は守られ、会社の経営資源は次世代へ継承され、取引先に迷惑をかけることもない。
□企業の存続と再発展
M&Aによる会社譲渡によって経営資源が豊富にある大手のグループ会社に加われば、財務体質が強化され、新たな技術や販路を獲得することで再成長の機会を得ることができる。
また、新オーナーが有する経営資源(技術、販路、ノウハウなど)を吸収できるようになり、社員のモチベーションも向上する。
□創業者利益の確保
M&Aによる会社譲渡を行えば、経営者は会社の借入金に対する個人保証から解放されるだけでなく、創業者利益を得て引退後の生活資金を確保することができる。
株式譲渡(会社譲渡)のその後、経営者や従業員、そして譲渡される会社に起こる変化を下記のようにまとめられる。
□連帯保証・担保提供の解除
M&Aによって経営権が移動する場合、この個人保証の肩代わりや解消について、買手の意向を交渉の早い段階から確認しておくことが重要である。
通常は、買手がこの条件を承諾しないことは考えられず、社長の個人保証や個人資産の担保提供は解除される。
□M&A後における経営者の処遇
株式の過半数を譲渡することで、経営権は買手企業に移り、多くの場合、買手企業から新しい経営者人材が派遣される。
現経営者は、このタイミングで引退する場合もあるが、経営のスムーズな引継ぎのために代表権のないポジション(会長、相談役、顧問など)で会社に留まるケースもある。
□M&A後における従業員の処遇
友好的なM&Aでは、従業員のモチベーションを落とさないように配慮することが多く、原則的には、大幅な人員削減や給与水準の切り下げなどといった急激なリストラは行われず、M&Aの直後については、譲渡前と同じような待遇で働くことができるケースがほとんどである。
□会社名
既存の取引先との関係を円滑にするためにも、株式譲渡の場合であれば、会社名はそのまま利用されるのが一般的であるが、買手がグループ企業であれば、そのグループ企業名を社名に追加することもブランディング手法の一つという考え方もある。

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