(1)事業承継税制の概要

事業承継で問題になるのは、株式の贈与・相続が起こると支払わなければならない贈与税・相続税です。納税するためのお金を準備できず、会社を廃業せざるをえないこともあります。

中小企業経営者の平均年齢は69歳で、60歳以上の経営者の半数が廃業を予定しているというデータがあります。中小企業の廃業を食い止め、事業承継をすすめることは日本経済の重要な課題です。

事業承継をしやすくするために、事業承継税制(一般措置)があります。一定の条件を満たせば、非上場会社の株式等の贈与・相続で贈与税・相続税支払を猶予または免除されます。
平成30(2018)年度には、さらなる事業承継促進のために、これまでの一般措置に加え、特例措置が創設されました。10年間の措置として、納税猶予の対象となる株式制限が無くなったり、納税猶予される割合が大きくなる等、利用しやすく、後継者(納税者)に有利になりました。

一般措置(原則) 特例措置
計画書作成 不要 都道府県庁に「特例承継計画」の提出が必要
提出期限:2018年4月1日~2023年3月31日
適用期限 特に期限の定め無し 下記期限中に自社株を贈与・相続された場合が対象
株式取得日(事業承継日):2018年1月1日~2027年12月31日
対象株数 全株式の最大2/3まで 全株式
税額の納税猶予割合 相続等80%、贈与100% 100%
納税猶予の対象者 1人の後継者のみ 最大3人までの後継者
雇用確保要件 承継後5年間は平均8割の雇用維持が必要
8割を下回った場合は、猶予されていた税の支払が必要
承継後5年間は平均8割の雇用維持が必要
8割を下回った場合は、理由等を記載した報告書を都道府県に提出すれば納税猶予は継続
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 なし
事業が継続できなければ、猶予されていた税の支払が必要
会社を売却した金額などで税額を再計算し、納税する
贈与・相続時の税額と差額がある場合はその差額の納付は免除
相続時精算課税の適用 60歳以上の贈与者→20歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与 60歳以上の贈与者→20歳以上の者(推定相続人・孫以外でも可)への贈与
特例承継期間後の減免措置 民事再生・会社更生時は、その時点での会社の評価額で税額を再計算
贈与・相続時の税額と差額がある場合はその差額の納付は免除
左記に、譲渡・合併による消滅・解散時を追加