(1)自社株式の評価方法

事業承継は、会社の相続・贈与になるので、会社の価値をお金に換算する必要があります。
株式会社や特例有限会社の場合、会社の全ては株式に置き換えられていますので、会社の価値を計算するために、株式がいくらになるか評価します。
非上場会社の場合、自社株の取得者が誰で全株式の何%の株式を取得するかにより、その株式の評価方法が違ってきます。

  1. 会社の意思決定にある程度以上の影響力がある株主(同族株主等)の株式
    →「原則的評価方法」:純資産方式・類似業種比準方式・併用方式のいずれか
  2. 会社の意思決定に及ぼす影響が非常に弱い株主の株式(株式比率の低い出資者等)
    →「特例的評価方法」:配当還元方式
  3. 第三者が取得した株式(M&A)
    →特定の評価方法はなく、株価は当事者間で自由に決められます

会社の意思決定にある程度以上の影響力がある株主の株式評価方法

純資産方式

「純資産方式」とは、その会社の資産、負債を相続税法が定める一定の基準に基づき相続税評価額に置き換えたうえで、資産と負債の差額である純資産を発行済み株式数で割って株価を計算する方法です。

1株当たりの評価額=純資産価額(相続税評価額での総資産額-相続税評価額での負債額-評価差額に対する法人税等※)/発行済み株式数
※評価差額に対する法人税等=(相続税評価額での資産額-帳簿価額)×37%

類似業種比準方式

類似業種の平均株価をもとにして、1株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額の3つの要素を類似業種と比準し、評価会社の株価を算出する方法です。
なお、類似業種の業種目及び業種目別株価などは、国税庁ホームページで閲覧できます。

1株当たりの評価額=A×(Ⓑ/B+Ⓒ/C+Ⓓ/D)/3×斟酌率※×1株当たりの資本金額/50円

※斟酌率は、大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5

A・・類似業種の株価
B・・類似業種の1株あたりの配当金
C・・類似業種の1株あたりの利益
D・・類似業種の1株当たりの純資産(帳簿価額で計算したもの)
Ⓑ・・自社の1株当たりの配当金
Ⓒ・・自社の1株当たりの利益
Ⓓ・・自社の1株当たりの純資産(帳簿価額で計算したもの)

◆具体的な計算方法
1.類似業種の値を確認する
類似業種の値(算式のA・B・C・Dの値)は国税庁ホームページの「財産評価関係 個別通達目次」で、相続があった年の「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」を確認します。

上の図のように業種ごとに金額が示されているので、自社の業種に近い業種の値を使用します。
尚、その業種目が小分類に区分されているものにあっては小分類による業種目、小分類に区分されていない中分類のものにあっては中分類の業種目によります。ただし、納税義務者の選択により、類似業種が小分類による業種目にあってはその業種目の属する中分類の業種目、類似業種が中分類による業種目にあってはその業種目の属する大分類の業種目を、それぞれ類似業種とすることができます。
Aの類似業種の株価は、課税時期の属する月以前3か月間で最も低いものとしますが、納税義務者の選択により、類似業種の前年平均株価または課税時期の属する月以前2年間の平均株価を使用することもできます。

2.自社の値を求める
◆「Ⓑ自社の1株当たりの配当金」の求め方
自社の1株当たりの配当金は、直近2年間の配当金の年平均の値を発行済株式数で割って求めます。
配当金は毎期継続して行う普通配当を対象にし、特別配当や記念配当など一時的なものや、資本剰余金からの配当は除きます。
株式数は、実際に株式を何株発行しているかにかかわらず(資本金額÷50円)の値を使用します。類似業種の値が1株当たりの資本金を50円として計算されているためです。

◆「Ⓒ自社の1株当たりの利益」の求め方
自社の1株当たりの利益は、自社の年間の利益※を発行済株式数(資本金÷50円の値)で割って求めます。
利益は次の算式で計算して、直前期の値または直近2年間の平均値を使用します。固定資産売却益や保険差益など経常的でないものは除きます。
※利益=法人税を計算するときの課税所得+益金に算入しなかった受取配当金+損金に算入した繰越欠損金
この算式で求めた利益がマイナスになる場合は、自社の1株当たりの利益は0とします。

◆「Ⓓ自社の1株当たりの純資産」の求め方
直前期末時点の資本金と法人税を計算するときの利益積立金額の合計を、株式数(資本金÷50円の値)で割って求めます。この金額がマイナスになる場合は、自社の1株当たりの純資産は0とします。

3.求めた値を計算式にあてはめる
国税庁HPの「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」参照
必要事項を順番に記載していくことで、非上場株式の計算ができるようになっています。

併用方式

会社区分により、純資産方式と類似業種比準方式を併用して算出する方式です。
尚、会社区分により併用割合が定められています。
1.株式保有特定会社、土地保有特定会社の判定基準
〇株式保有特定会社
株式保有割合が50%以上
※株式保有割合=相続税評価による株式等の価額÷相続税評価による総資産額

〇土地保有特定会社
会社の規模により、土地保有割合の判定が異なります。
※土地保有割合=相続税評価による土地等の価額÷相続税評価による総資産額
【土地保有特定会社の判定表】

2.株式保有特定会社、土地保有特定会社の評価
〇株式保有特定会社
S1+S2方式という株式保有特定会社のみに適用される計算方法と純資産価額方式のいずれか低い方の評価になります。

※S1+S2方式
その会社の保有している資産を「S2:その会社が保有している株式などの価額」と「S1:その他の部分の価額」に分けて株価の評価を行う方式。

(S1)株式等以外の資産の価額
原則的評価方式(大・中・小の会社区分の応じて、純資産方式、類似業種比準方式、併用方式の3種類)による株式評価額
(S2)株式等の価額
その会社が保有する株式等のみを純資産価額方式により評価した金額

会社の意思決定に及ぼす影響が非常に弱い株主の株式

配当還元方式

1株当たりの配当還元価額=1株(50円)当たりの年平均配当金額(※)/10%×1株当たりの資本金等の額/50円
(※)(直前期末以前2年間の配当金合計/2)/(直前期末の資本金等の額/50円)
尚、一般的に相続税評価額より配当還元方式による評価の方が株価は低くなる傾向にあります。

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